Shingo Tokihiroのおしゃれ旅情

第四回
花残月の扉に立って

 ようやく私が恐れる桜花が散り敷いて、名残の赤いがくと若葉がみえ始めている。私はホーと安堵の息を吐く。いつからか私は桜の満開の気に打たれるのが怖くなっていた。そんな私が近くの道に一本、雪洞のように咲いたソメイヨシノの花なかに桜の精をみたことがあるのは、思えば不思議なことだ。

 3月、花津月の私はといえば濁流のような忙しさだった。ファッションショウ、3つのコンサート、ミュージカル、パフォーマンスに撮影。そのどれもがまったく違う世界で、私は最後には魂とからだのリズムが妙にずれながら時間の中を泳いでいたと思う。栃木、東京、横浜、赤城そこで、私の作品が生きていた。作品と旅をしている私。舞台の上で出演者たちの世界に参加しているコスチュームたちの姿。でしゃばらず、それでいて存在をさり気なくアピールしながら舞台の奥行きを創る手助けをしている。

 舞台の裏方で着付けをしたり、直したり、スタッフからは「デザイナーの先生が、ボタン付けとか丈直しとかされるんですか」と驚きながらいわれても、嬉々として針を動かしている自分。本当に現場が好きなんだなと思う。それ以上にどこまでも自分が責任を持つためには他人に任せられない気持ちが、私を現場に駆り立てるのだ。

 舞台で私の作品を纏ながら演技し、演奏したりするアーティストたちの輝く姿を見ながら、衣装作成にに携わった全ての人たちの心を思いやるのだった。パターンを作成した人、縫製の人たち。彼らは今ここにいないけれども、あなた達の気持ちは技術はこんなにも美しく実ったのだと感謝の思いとともに。

 奪われし 桜慕いて いまを咲く
        光たわむる 夜のせせらぎ
                 東京・中目黒の夜桜に