Shingo Tokihiroのおしゃれ旅情

第八回
旅先の虹


元ビール工場・札幌
 この便りを書いているわたしは春を待つ如月の夜の、静かでもないオフィスにいる。今年になってさらに旅が重なっている。私は夢を見る。今回はそのはなし。あまりに鮮烈なためにレポート用紙にメモ書きしていたものです。では、どうぞ。

 それは睦月、徳島の友人宅で見た夢。私は土手に沿って歩いていました。たぶんむこうは川でしょう。手にスケッチ帳をもっていた。なぜか、私は虹を見たい、それも虹の始まりをみたいと願いました。すると、どうしたことか、見上げる青空に高い土手の手の向こうから巨大な虹が噴水のようにたちあがっていきます。しかもその虹の色は右から左へと変化しているのです。普通は内側から外に向かって七色にかわるはずなのに。

 私はなおも虹の始まりを見たいと願いました。大きな虹はゆったりと弧を描きながら中天へとさしかかります。赤から黄、緑と変化してきた色が、丁度、青に変化をはじめたところでした。花火のように弧の先端に青い光が弾けて色が今まさに生まれる瞬間。気がつけば、私はその虹のはじまりに浮かんでいます。そう、空の上に。絵の具の色は黄金。けれどそれを筆にとると美しい青に変わるのです。虹のつづきを私自身が描いていたのです。


京都の町屋を改造した多目的空間「The Garden」。写っているのは照明家、岩村原太氏


新潟の小さな港町
 土手にはハイキング中の中高年の夫婦がふたり。「これは珍しい!写真を撮っとかなくっちゃ」と叫んでいます。かれらはリュックからカメラを取り出そうとするのですが、その間に虹は霧のように消えていました。

 私はといえば、再び土手のこちら側に立っていました。不思議にも目の前に水銀の固まりのようなものが宙に浮かんでいます。それが、奇妙にかたちを変えたかと思うと最後に龍になって空の彼方へ飛びさっていきました・・・・。

 わたしは夢をよく見ます。この夢は最近の中では美しく印象的なものにはいるでしょう。

 東京の夜。つぎの旅支度をする私にこの夢はホーッと雪洞のように柔らかに行く末を照らす道しるべにも思えるのです。なぜ、こんな夢を見たのか、それは必然であったのか私にはわかりません。良かった事は、ああいい年になるなと感じたことでしょうか。となりの部屋から流れてくるのは宮沢賢治作曲の星めぐりの歌。私の好きな曲です。「本当のさいわい」を求めた彼のそのこころを大切にわたしも生きたいと願うのです。新しい年もまた。

(徳島市)