Shingo Tokihiroのおしゃれ旅情

第十八回
硝子の体の中の波


新潟で再開した、クアラルンプールで出会った友人たち
 12月を迎えています。久しぶりに帰ってきた東京のスタジオで、しかもバーゲンをしている最中に、このおしゃれ旅情を書いています。日替わりで移動した期間、ひとところに居ながら時間をもてあましていた期間。しかし、そこには必ず人間がいました。仕事でも、プライベートでも喜んだり、悲しんだり、不満や怒りや感謝や不安や希望をもたせてくれ、弱さや強さを教えてくれたのは人間でした。この頃、自分の体がガラスで出来ていて、日々おきることで心にいろんな波が起きます。時に泡立つこともあります。泥の波であったり、澄んだ透明な水であったり、オレンジ、金、ピンクに黒にみどりに、芥の浮いた水、光の水。万華鏡のようにその様子が見えるようです。それほどに影響を受け易い自分であったかと改めて思い知るのです。テレビのニュースであったり、顧客との諍い、やりたかった仕事が入ったとき、同時に期待した仕事がキャンセルになった時、新しい友人の出現、懐かしい写真にハッとしたときも。この波が一度でも鏡のように凪いだことがあっただろうか。

 来年は私も半世紀、50年を生きたことになります。人の評価ではなく、両手にたくさんのものを抱えてきた人生だと自分で思います。生きること、生き抜くことで初めて知ることがどれほど多いだろう。いつか私が永遠の世界に生まれたとき、私の好きな立原道造や宮沢賢治に地上で生きた彼らより長い時間に起きたこと、彼らと生きることの意味を話し合いたい。生き急ぐとか、若くして燃焼しつくしたとか、使命を終えたとか、若い死を他人は勝手に言葉で飾るけど。寿命も運命の心配は誰かにしてもらって、私は私にしかできない何かを自然や時間や宇宙や人たちとスクラムを組んでやりつづけよう。気がつけば12月。この瞬間にも死と生のうねりが地球を巡る。私は生きることに忙しい。

リリック 東京