Shingo Tokihiroのおしゃれ旅情

第二十二回
早花月のおわりに思う色


荒川学園ニットショウより
 三月の扉が閉まり始めた今日は、朝からさらさらと降る雨で空は雲母色をしています。スタジオでいろんな舞台の衣裳をデザインしながら、天候と時間とによって変化してゆく風景が、情景へと変わってゆきます。今を盛りと咲く白木蓮のはなを見ては昔から不思議でしょうがなかった。なぜ花だけが咲いて、葉がないのか。もし、東洋にエデンの園があったなら絶対にこの花はあったはずと一人納得している。白い炎が燃えたっているような花びらと優しく艶やかなかおり。そういえばお茶にも御香にも木蓮の名はあまり見かけない・・・。

 襲の色に【雪の下】がある。表は白(白生絹)裏は紅梅(紅花)。ほの桜色のピンクが白生絹を透かしてみえて、雪の向こうに春を閉じ込めたような。いや、冬のこちらから憧れの春を見透かしているような色襲。もう帝都では桜も咲き染めています。

 先日、栃木の荒川編物専門学校のショウにいってきました。私のニットのブランド「ANIMAアニマ」をここで編んでいただいている関係もあって、生徒作品の発表と同時に私のニットの新作を披露しているのです。布を裁つのではなく一目一目編んでゆく。熟練した生徒達は30年を越えている人たちも。一年に一度の晴れの日。ライトを浴びながら300人近い観客の視線を一身にあつめる瞬間。しかも、着ているのは一年かけて編み上げた自分の作品。最高齢は80歳をこえておられるとか。かつては母親がセーターを編んでくれたり、マフラーを編んでくれたり、擦り切れたパンツにツギを当ててくれたりしたものでした。カッコよさとは違う愛情の温もりを感じたものです。今はミシンのない家庭が多くなり、裁縫も編物も出来ない母親が増えてきています。「作るより買った方が安いし、綺麗」といいます。より自分が楽な生活が見え隠れします。そこに置き忘れてきた愛情。大人が思う以上に子どもは親を誇りたいと思うのです。見た目の美しさではなく、自分のために一生懸命に作る親の姿に、たとえ出来上がりが不恰好であっても嬉しさは変わらないはず。販売のためではない、自分の喜びのために創りあげたオリジナル。店頭に並ぶ商品とはまた違う美の原点があるように思えるのでした。今回のテーマが「花園」。吹きすさぶ拝金主義の対極にある、それぞれの人生が香り立つ花園。平和で温もりのある笑い声に溢れた・・・、春の色でした。