Shingo Tokihiroのおしゃれ旅情

第二十四回
懐かしい詩集が伝えるもの


30年前の私
 五月最後の日曜日。ちょっと部屋を整理していたら若い日の詩集がでてきました。といっても真っ白なノートに書きつけただけのもの。経験より頭で考えることが多かった時代の詩は、国語の先生から「君はえらくロマンティストだなあ」といわれたことを思い出します。詩と同時に心酔していたギリシア神話の神々や聖女、聖人たちを拙いイラストで描いていました。そこには、厳しさも甘さも中途半端な私が立っています。でも確かに今の私をかたち創っている思春期の私です。

短歌三首

白百合を 好きとぞ言ひし かの人は 春、ゆふ空の 星に祈りて

一人罪の 錘を抱き 飛び入りぬ 紅き炎の 苦海の内に

忘れおる 祭囃子よ わが耳に 遥か連なる 花綱の道

詩二編

口に溶けるチョコレート

私の嫌いなペパーミント

私は嫌いよ、あの嘘のグリーン

つくられた爽快、おぞましさ

いいえ、いいえ

今は花の笑いを浮かべましょう。

数え切れない嘘を吐く、この口の中でころがして

一体、私はいつ真実を語っただろう

鉛色の重い雲に覆われた北の海

今は狡さがまとわりつく

きれいな形の唇の美しい少年達よ

朝の光のうちに 気高い言葉

それだけを、ただそれだけを空に放て

         *

秋の澄んだ陽が

この雑然とした部屋に入り込んでくる

おまえはヘルメス?御使い?

それとも、もっともっと旧い神の伝令?

芯までは腐っていないと思う

私の心をこの体からくり抜いて

あの晴れた秋空の清清しい大気にさらし、

全山燃え上がる紅葉の山の奥にある清冽な滝で洗って戻して欲しい


20年前の私
しばらくは生きてゆけるだろう

 愛していたアッシジの聖フランチェスコの「聖なる単純」。その一方で古代の神話の世界にも憧れた時間。純潔と官能の葛藤。生活を心配せず、生きることだけを考えれば良かった純粋な日々。ページをめくりながらあの頃の自分が、今の自分を認めてくれるのだろうか。そんなことを思います。ノートは半分近い余白が残っている。そこに今の私の言葉を書きつけていこう。過去の私と未来の私に思いを馳せながら。


(リリック 東京)