Shingo Tokihiroのおしゃれ旅情

第四十回
こころの波と時間の風に吹かれて

 台風が近づいてきている長月六日。東京のアトリエで、明日からの出張を前に、作品集≪世界≫が届いたあの台風を迎えようとした7月の思い出から始めましょう。


京都にて。横笛奏者・滝本ひろ子氏

福井にて
 7月14日土曜日。遅れに遅れていた作品集が届くのを今か今かとスタッフと一緒に首を長くして待っていました。折りしも、台風が中国からこちらへと向かっていて、雨脚はひどく強く・・・・。この夜に私は中国地方へ作品集の[手渡し&ひとりキャンペーン]と称して出発する予定でした。だから、この日に本&DVDが届かなかったらどうなるか。まだこない、まだ来ない。あの時は私もスタッフも息をのんで玄関のチャイムが鳴るのを待ち構えていた。そして、念願の作品集到着!思わず拍手。すぐに発送の梱包を始める。先行予約のお客様から[まだですか?]と、ご連絡をいただく度に、寿命が縮まる思いをしていたのですから。外は益々雨と風が強くなり、空さえも夕暮れのように暗いけれど、私の心はゆっくりと明るんでいくのがわかります。目の前に積まれてゆく[世界]を眺めながら、劇的な何かの始まりを予感していました。


出雲にて
 作品集に参加したアーティストや写真家たちに、ただ送るのではなく手渡しながら、作品集への思いを伝え、尚且つ、多くの人々に紹介してもれえればと思ったのです。よく、テレビで芸能人たちがショップを新曲のキャンペーンで巡っていくあの感じ、でしょうか。今回は中国、近畿地方を巡る旅。夜行の高速バスで出雲へ。渦巻く雲と風を引き連れた巨人の足元をかすめるように進みます。(後で聞いた話ですが、あの夜、高速バスは私の乗った便のみが運行していたのだとか)。出雲、新見(岡山)、大阪、京都、大阪、奈良、福井、敦賀そして名古屋への日替わりの行程は、旅の醍醐味そのもの。嬉しかったのは思っていた以上の評価をいただいたことです。一度、本になったらこの身が地上から消えても作品たちはこの本とDVDの中に残っていきます。その時、[面白いことやった人間がいたんだなあ]と思われたら本望です。同時に協力してくれた友人たちの名も連なっている。作品を世に出すことは自己満足だけでは許されない責任があることも、今回の出版で強く実感した次第です。


大阪にて
 戦争に差別など、醜く病んでいることの多い世界に少しでも美しいものを生み出すことが創作を生業としている者の使命なのかも知れません。


岡山・新見にて
 訪ねた友人たちとそのご家族も心からのもてなしをしていただきました。お父様が鮎を釣ってくださったり、本を売るためにお嫁さんの実家や親戚の家まで回ってもらったり、新しい本屋を紹介してくれたり、もちろん撮影もしてご馳走にもなって、新しい仕事まで決まって、当初の[一人キャンペーン]という寂しさはどこへやら、豪奢な綴れ織のような旅となりました。新しい土地へ移動する間のひなびた電車の中で、この[作品集]が私をまた新たな世界へと導いてくれているのを実感するのです。以前、私は[時広の人生をおもしろいと感じ始めている]と書きました。振幅の大きな出会いと別れと繰り返しながら、時広は確実に大きな海へむかっている手ごたえを感じています。しっかりと[謙遜]の帯を締めなおして、この航海に向かいます。

大仏様の御身拭いは・・・


御身拭い
 東大寺の大仏様の[御身拭い]に参加してみる気ある?と聞かれたのが5月のこと。即座に[ええ、是非]と答えてから3ヶ月。何をどうすればよいのかわからないまま当日を迎えることに。8月7日、早朝から東大寺敷地内の湯殿で沐浴して身を清めるとのこと。200人近い参加者がいるということなので、どれだけ大きな湯船かと思いきや、7〜8人で一杯になるぐらいの狭い場所で、次から次と僧侶も在家信者のひとも入っていく。本当に湯をかぶるだけのシンプルな行程。

 渡された白装束を着てみても、今ひとつ気持ちがピンとこない。毎年、参加されるという一団は勝手知ったる様子でどんどん本殿へと向かっていく。

 で、皆が御仏の体の御身ぬぐいができるわけでもない。くじ引きで私は大仏殿の中にある新旧の大仏殿と東大寺の模型の掃除を10人くらいでやることに。


偶然にであった奈良公園の万燈会
 それでも、掃除が終わりかけたころに大仏さまの御体の上にのらせていただきました。掃除が始まったらもう大仏殿の中は誇りの嵐、なんと表現したら良いのか。一年でこれほどの埃がつもるかというほど、凄まじい量。やってもやっても終わらないとはこのことでしょうか。大仏さまの御ひざに乗ったときも有難さというより、周りの掃除している人たちの活気に押されてしまったというのが、正直なところでした。今に思えばそれは貴重な体験ではありましたが、御仏のありがたさを感じ入るには、ゆったりとした時間の中で手を合わせ仰ぎ見るほうがよいかと。掃除そのものは時間との戦いで、もちろん女性はいませんが、子どもにかえった男たちが一生懸命校舎の掃除をしている印象でした。

 来年ですか?もし仏縁があれば参加させていただけるでしょう・・・・。

 ちょうど夏休みで、家族旅行も兼ねての旅。幼いころからいろいろな場所やものに出会わせて世の中が広いことを知って欲しい。私にできることはそんなことでしょうか。

(奈良・東大寺)

3回目の鼓童アースセレブレーション
〜水の神と大地の神と美の神と〜


鼓童アースセレブレーションのフリンジの会場、小木港を望む公園
 いつも、天候との戦いである地球祝祭(アースセレブレーション)。今回は20回目記念すべき舞台。[宵のゆんづる]は当初なくなっていたために、今夏の佐渡は諦めていました。それが[縁]でもあろうかと思うので。ところが私が衣装をデザインしているシンガーの松田美緒の出演が決まり、最終的に宵のゆんづるも特別フリンジで、小木の埠頭にある公園でこの祝祭の最後を飾ることになったのです。私は地球祝祭というだけに、決して自分たちの祭りで終わらず、そこに集まった善い気持ち、波動を世界に向けて放つべきと考えて、2年前始めて参加させてもらい衣装の立場から、この祝祭を実現できたことそれ自体を寿ぎ感謝したいと願ったのです。今回も雨が降るか、どうなるかという微妙な予報。

 私が直江津からフェリーで出航したときは雨が降っていました。甲板に立ち曇天を映す海の色は暗い。なぜか巨大な龍がゆっくりと海の中を進んでいる感じがしたのです。私はゆっくりと海に手をかざして祈りました。[私は今、アースセレブレーションに参加するために佐渡へ渡ります。しかし、それは単にイベントに参加したいためではない。この星の暗い部分を、心あるものの熱い心で、平和や環境への実現への祈りとしたいと参加する。もし、この心が自然の心に叶うならば、どうか雨を降らせないで欲しいと。


宵のゆんづるの衣装を着た鼓童のメンバー
 実際3日間に、朝方、雨が降ったり、毎夜、雷鳴や稲光が空を走りましたが、城山の公演の時間には全く問題なく晴れ渡ったのです。そして、最後の[宵のゆんづる]は城山のコンサートでヒートアップした心を、静かにどこか懐かしく典雅なメロディにのせて、どこかしら秋を感じさせる海と空へ放っていったのです。小島千絵子さんは蓮華を想わせる衣装、他は水の神々に捧げた衣装でした。

 そういえば、最終日に松田美緒さんが纏った衣装も、海の女神に捧げたものでした。雨が降らなかったのは、私の祈りの力?いいえ、違います。このセレブレーションを成功させたいと願ったスタッフ、出演者そして観客たちの気持ちが自然を動かしたと私は思っています。次の日は、松田美緒さんと佐渡をロケハンして撮影。その次の日私たちが、この神の島を離れた後、佐渡は洪水警報がでるほどの豪雨に見舞われたとか。自然もまた、このアースセレブレーションに参加していたのですね。

(小木:佐渡)