Shingo Tokihiroのおしゃれ旅情

第四十一回
それは福島の・・・

ゆず沢茶屋の敷地の裏山からみた母屋
 以前、写真家の大和伸一さんのご実家、福島市の山側に向かってある民芸風な料理と素晴らしい自然のなかでのレストラン「ゆず沢の茶屋」のお話を書きました。そこで不思議な体験をしたことも。

機をトントンと織るような旅が続いていたとき。[そうだ、福島へ行こう]と心のどこかで叫んで、すぐに大和さんに連絡をして次の週にはもう懐かしいあの風景を見ていました。目的は新しい衣装を自然の中で撮ってもらうこと。

野の花々が咲き乱れる東屋 二階のサロン
 大和さんは第一作[曳く月、戻る太陽]でも、お付き合いしてもらいもちろん「世界」でも作品は登場しています。あらためて「縁」とは不思議なもの。新潟も徳島もこの福島も私にとって特別に何か関係があるわけではないのに、こうしてふるさとの様に訪れているだから。それこそ清らかな水がながれる沢をもった3000坪の敷地に点在する民家風な建物、土蔵から、茶室にもなる東屋はすべてご母堂で大女将である忠子夫人の夢への結晶であります。
一年を通して点いている炉辺の炭火の美しさは夏の日も 6年ぶりの大女将忠子夫人との記念撮影
杉を伐り倒し、秋には彩を見せる落葉樹を植えて、ひとつの世界を創りだしています。この自然はありのままではなく、一人の人間の美意識が生んだ世界。それが決して押し付けがましくないのです。撮影のときもそうなのですが、いつも、ふっと安心させる空気みたいなものがあります。おお女将は、私の創作の苦労へのよき理解者でもあるのです。御自身も夢の実現のために大変なご苦労をされてこられたのでしょうから。しかも、それは終わりのない道です。

 訪れた時は、矢のような日差しが束で身を打つような夏の日の昼下がり。離れで仮眠をさせていただいた後は、ゆるりと母屋の周囲を散策します。河鹿の声と枝先を渡る風の音と、木々の先の流れる雲。そうして、夜、かつてフロントの四季のディスプレイをしていた旅館がある土湯温泉へ大和夫婦と行きつけのお店で青春の語らいと手料理で温もりの時間がすぎてゆきます。人ありき、情ありきですね。

 翌日の青蓮と大和伸一氏とのコラボレーションの結果は、後日ギャラリーで。

 星座のような場所です。福島のあの場所は。

(燕去月 福島)