Shingo Tokihiroのおしゃれ旅情

第五十三回
もみじ・紅葉・モミジ それから師走

 今年が「源氏物語千年紀」ということで、それこそ演劇・音楽にいたるまで様々に特集が組まれていました。私も、11月28・29日、京都府立府民ホール(アルティ)で催される創作舞踊劇「源氏夢幻」の衣装プランナーとして、紅葉の季節を京で過ごすことになりました。

 この季節の京都は正にドル箱の季節。溢れかえる人人人で、普段は人の来ない神社、仏閣まで案内旗を先頭にした御一団が続々と登場。心静かにもの想うどころか、殺気だったような感さえある場所もあります。だから、実をいうと観光シーズンが苦手な私です。



晩秋の洛北

夕刻の鴨川
 今回は急遽、宿をとることになり、生憎のこの季節、ホテルの空きもあるはずもなく、結局、洛北の研修センターが宿となったのです。リハーサルを終え、夜その宿へと向かう道。街中の喧騒を離れて、夜には鹿の悲しげな鳴き声さえも聞こえてくるその宿。テレビもない部屋はともかくも静かでした。目くるめくようなドラマティックな源氏夢幻の舞台と隠遁したような夜の洛北の地。この二つを繋いでいたものは都の紅葉でした。御所の敷地を散策すれば、大和絵そのままの紅葉の乱舞。心を打った緑から黄、赤、紅へと色のグラデーションをみせる一本の樹。しかも朝はまだ観光客はいません。透き通った明るい太陽の陽が降りそそぐ冬の朝の御所の紅葉。黄金のイチョウの大木の脇を通り、砂利を踏みながらあちこち一人で紅葉狩り。洛北の朝の凛とした冷気に心も洗われて、紅葉の葉からは清らかな雫を朝陽に煌かせています。街へ向かうゆるやかな坂を下りながら、遥かに洛中の町並みを眺めています。


京都から佐渡へ移動する新幹線から見た美しい富士のお山

海へ続く道すがらにあった柿の木と実
 あれだけ、人を煽るように京都の秋・京都の紅葉は特別と喧伝するのも、少し理解できるかなと思った私です。本番終了の翌日、佐渡へ向かいました。そこには京の都とはまた別の紅葉が待っていました。見る人もない秋枯れの道に突然、光の群れのような小菊。名を知らない数種類の朱い実の蔓を巻きつけた杉の木。見事に紅葉した楓の回廊。でも、そこにも人はいないのです。海に向かう道を一人辿りながら、いつの間にか子供にもどっていた自分でした。懐かしい歌を口ずさみながら、うららかな、少し潮の香りのする風を感じて。人の津波のような観光地のメッカ、京都から、このおおらかな自然の中に身をおいている自分。今年も振幅の多い旅だった気がしてきます。そして、来年も様々な土地、国が私を待っています。早い一年ではあるけれど、一つ一つ思い出し、振り返ってみると濃い一年だったと知るのです。出会いの全てが未来へとつながっています。2008年の師走。あと、ひとつの仕事を残して今年は終わり。すでに来年、再来年の仕事の準備を始めています。今年も「美の力」を信じ抜くことができた年でした。「世界」は時を流れてゆく揺り篭。平和のうちにこうしておしゃれ旅情を記す私に、人々叫び声が聞こえてくるようです。私は何ができるでしょう。

佐渡の晩秋

(リリック 東京)