Shingo Tokihiroのおしゃれ旅情

第五十四回
命と死を纏いながら招く新しい年

夕暮れ、遥か九十九島を望む(長崎県・佐世保市) 訪れたとき折は必ず訪れる二十六聖人の公園(長崎県・長崎市)
 今年も始まって早々に旅が始まりました。気がつけば2009年始まりの月が終わります。新潟へ、佐渡へ。それから佐世保、長崎、宇部、京都と巡っり、仕事であるはずの旅なのにいくつも生と死と出会い、生き様に出会ってくることになったのでした。新しい生命の誕生の喜び、老いとともにやってくる辛い現実とそれを介護する側の不安と祈り。難病になり確実にやってくる死と対面しながら生きてく友の苦しみと混乱。懐かしい土地へ訪れて、友人との懐旧の縁を確認する。変わっていく街。飛行機、バス、列車、船と様々に交通手段を移動しながら、流れていく窓外の風景は人生と同じだと、センチメンタルな気持ちの私がいます。旅は人に出会い別れ、縁を作り結んでいくこと。でも、私の計画とは違う別の予定が存在していて、そのプログラムに沿って動いている、そんな実感をもつことも多々あるのも事実。自然は変わらず晴れたり、曇ったり、純白の雪を降らせたりします。それが救いだなあと感じています。そう、変わらないことがホッとさせてくれるのです。

新潟港から両津港へ向かうフェリーから 小木から両津港まで送ってくれた鼓童のメンバー
 アトリエにいれば、私の世界が存在し生も死も超越したある種の諦観の空気が流れています。幼い頃からどこかしら「無常観」みたいなものを感じていました。理由もなく訪れる新しいデザインの発想につき動かされながら、型紙を起こし、布をあてながらいつ使うとも知れない衣装たちを創りはじめる。それはまるで「予言」のようだとも思うことがあります。必ず、ぴったりの舞台がやってくるのですから。自分でも面白くて興味がつきません。儚いこの世の「生」の時間と知りながら、美しく、人が楽しみ、喜び、希望を抱くことのできる何かを創りたいと願う。崩れるものだから、「永遠」の一部を形にしたいと思うのかもしれません。インスピレーションは何にも束縛されない世界の産物ですから。

新潟へ向かう船から見た佐渡海峡の夕暮れ 今回の旅で初めて出会った降り積もる雪。 山口の自宅のベランダに咲く山茶花に積もる雪
 衣装デザイナーといいながら、自分でいろいろ企画もしています。いつも綱渡り。衣装だけを創っていればいいのでしょうけれど、そこに収まりきれない自分が居ます。もう20年も前のこと、ジャーナリストだった私は取材で訪れたロンドンで、名のある霊能者の元に未来について観てもらおうということになり、友人の編集者たちと3人で訪問しました。60歳は過ぎているであろう白髪の老紳士は日本からの私たちを歓迎してくれました。部屋中に本が積み上げられ、年代もののピアノが一台ある黒く煤けた部屋。一人、一人観てもらいながら、私の番になると、手をとりながら、彼は「あなたはサイキックの才能をもっている。それは神様からの贈り物。訓練して人々を幸せにしなさい。」それから「あなたは将来プロデューサーになる」と語ったのでした。友人も私も「そんなんなぁ」と一笑したのですが、その時、密かに彼の言葉を心の引き出しにしまいました。

ご注文いただいたウェディングドレスの一部
 今日の東京は昨夜からの雨。

 新しい年もこの星には計り知れない生と死の物語が綴られていくでしょう。「生」が苦しみではなく、感謝と希望であると信じられる一日がくること願いつづける一人の小さなデザイナーを、時の女神は新しい年へ招きいれてくれました。今年もまた、旅をつづけます。人とモノと心を綴れ織りにして。

(リリック 東京)