Shingo Tokihiroのおしゃれ旅情

第七十二回
花が、華が・・・・・

福島市にあるお店「ラブ ソング」。左から写真家・大和伸一、スタッフ、美恵子夫人、マスターと私
 自宅からアトリエまでの道にも、公園にも緑が輝いている。そして、花が次々と咲いている。それぞれの言葉で季節の挨拶をしているようだ。桜に占領されたような春とはちがい、この季節は色も種類もバラエティに富んでいる。以前は薔薇と躑躅、せいぜい菖蒲かあやめといったところだろうか。

 旅先で、とっぷり自然の中に身をおくことも多いが、東京の何気ない路地を通りながら、そこにある「季節」を感じることも同じように嬉しい。

 福島市へ青蓮の撮影に行く。風評被害をまともにくらい、沈滞したこの街を訪れた頃は、山には雪が残っていた。世の中が震災の被害と、原発の被害の深刻さと、被災者の救援に深刻になっている時に、衣装の撮影か。と思われるだろうか。


この季節、この花の群落が家の塀やマンションの壁など、あちこちにあって、独特な甘く強い香りを放っている。
カメラマンの大和伸一氏は、津波の被害を受けた海沿いの町を見に行った時の話。「街がなくなっているんだよ。」その光景をみて、重いものが心に刺さってきたという。「それでも・・・」と彼はいう。「あの町で写真を撮りたい。もしかして、批判を浴びるかも知れないけど。」

 市内のラブソングというお店は行きつけの店。芸術に対して深い理解と達観した考えで、私たちの良き理解者でもある。マスターは「いいんじゃない。批判されても。いろんな人がいるから。」の一言。

新潟・五泉市の牡丹園は見事に咲きこぼれるほどで、牡丹の香りというものを実感しました。
 かつて、阪神大震災の直後に私の衣装を纏ったモデルを神戸の地割れしたマリンパークで撮ったカメラマンの話をした。彼は神戸の出身だった。「悲惨な写真は沢山ある。自分は鎮魂と未来への希望を撮りたかった。」と語った。その写真はその年、国連のギャラリーで「REBIRTH(再生)」と銘打って展示されたのだ。

 もしも・・・、と私も考えている。その写真が許されるならば私たちは撮ることができるだろう。この地を襲った悲劇に対する鎮魂と復興と未来を祈って。私たちのできる方法で。自分たちの意思だけではない、もう一つ別の力、運命ならば。

5月21日に京都市・妙蓮寺で催す「美の種 IN 京都/華の都・香の都」の始めて、4人揃ってのリハーサル風景。左から、滝本ひろ子(横笛)、竹野綾(ダンス)、森美和子(横笛)。トモコ ダンス プラネットのスタジオで。
 そして、その時のための衣装を心を込めて、祈りと共に創り上げる準備にを始めている。そうすることで、思いは震災だけでなく、世界で繰り広げられている悲惨の事件や、災害に広がっていくのだ。何が出来るだろう。答えはいつも同じ。自分にしか、自分だからできることを。

 この地にも花は沢山咲いていた。まるで、何事もなかったかのように。京都も、新潟も。花は人々のこころを優しく包み、励まし、力を与えている。

 この原稿を打っている週末には、京都で美の種のパフォーマンスが行われる。私は何をしているのだろう。何をやらされているのだろう。終わることの無い人々との出会いは、連祷ように、花綱のように香りながら、これからも続いていくのだろう。

 私は笑っています。泣いて笑い、怒って笑い、あきらめて笑い、 おかしくて、笑っています。 それが、幸せだと・・・また、笑っています。

(リリック・東京)