Shingo Tokihiroのおしゃれ旅情

第七十五回
華となって飛ぶ美の種と時間

カメラマンの高嶋敏展氏と写真をチェックする青蓮
美の種IN宇部VOL.2「華の都・地の都」の会場になったヒストリア宇部(旧山口銀行/設計、村野藤吾)
 旅が続いています。葉月は早乙女太一「晩夏の舞い」、銀座・Tasakiで一ヶ月間、センサーで動くロボットが纏う氷の女王の衣装展示。長月は上田遙ダンスシアター「Sotova」、新潟・上越で、新潟日報主催レディースサロンでの講演。故郷、山口・宇部での美の種の2回目「華の都・地の都」、出雲の撮影。  色んなことを考えました。考えさせられました。でも、やっぱり、最後は「人」でした。何でも限界までやりつくした果てに、人は「祈る」という行為にいきつくのではないか。

(Stova)で、演出・振付の上田遙氏、ダンサーたちとスナップ
 衣装デザイナーの肩書きの割には、演出したり、音楽構成したり、出演したりと、あれこれ分野を広げているために、多彩な人間関係を築く一方で、人間の様々な美醜を見ざるを得なくなります。

 来月は五十六歳。
 時広真吾という一人の人間を受け入れてくれる。多くの人たちとは「損得」で繋がっているのでなく、「気持ち」で結ばれていると信じています。

撮影に訪れたダンサーの藤田承紀さん。彼の手作りのパスタでブレイク。
「Sotova」では、予算を度外視してやるだけやった。それは、日頃、自分自身が人に言ってきたことを証明したかったのかもしれません。自分との闘いでした。

「劇団朱雀」との今回の仕事は、舞台に関わる人間の良心との闘い。それが、ショウビジネスであろうと、アマチュア劇団であろうと変わらない良心に従って行動できるかどうか。

「Tasaki」とは、プライドの闘い。単なる駒扱いに対して自分自身がどうそれを受け止めるか。彼らにとって流れていく多くの仕事の一つに過ぎずなかったとしても、自分は変わらず、こだわりながら取り組んでいく。

「華の都・地の都」は、地方都市で開催する美の種の課題を克服する闘いだった。チケット代、内容、状況が厳しくなればなるほど、関わった人々の人間性が見えてくる。

舞台の外ではスタッフが衣装にアイロン中(Sotova)
 それぞれの種には結果が現れて、萎むものも花咲くものもあります。結果がどうであれ、私自身は「美の力を不信しなかった」と自負しています。近づいてきては去った人。新しく出会って友情を育んでいけそうな人。人間の思惑が蠢く世界に生きて、尚、変わらないこと。  もしかしたら、私は「難しい?!」人間なのかも知れません。それでも、私と私の世界を受け入れてくれる人々が増えているのは、幸せであり、この世界もまんざらでもないと感じるのです。

 56歳は人生の折り返し地点を、とうに過ぎているのでしょうか?やり返しがきかない年齢でしょうか? 私は、永遠の世界を信じているので、折り返し地点がありません。いつまでも美の種を携えて、旅を続けます。 時に怒り、嘆き、笑い、感謝し、嫉妬もし、歓び、語り合い、許し、赦されながら。 今年の中秋の名月は、冴え渡る空に美しく清冽な光を放っていたことが忘れられません。

(リリック・東京)